ケインズの有効需要から
現在の経済循環
2015年5月修正
ケインズの有効需要からの貯蓄投資の所得決定説から考えると、上図のように海外投資による国内生産の減退、所得の減退が消費不況を招き不況に陥っていたことが証明されていますが、再度そのことを考えてみます。
「尚、このときの投資は株券や社債券を購入したり、土地を買ったりするのでは無く、企業が新しい工場設備を建設したり、消耗した設備を再築したりする投資です。」
上図から
所得=消費+貯蓄・・・(1)
所得=消費+投資・・・(2)
(1)と(2)から
消費+貯蓄=消費+投資となり。
故に
?貯蓄=投資となります。
しかし、必ずしも貯蓄と投資が一致することはないのです。それは、起業家が新しい投資の断行を決意するもの、それは投資誘因ですが、その投資誘因は投下する資本の利潤率なのです。そして、この投資誘因は将来的なものなので、利潤を上げられる為の経済環境が重要なことになります。よってその時の状況で貯蓄=投資とはならないのです。あくまでも貯蓄=投資が経済の循環をよくする前提なのです。
この貯蓄>投資のときに不景気になるので、政府が財政投資や金融緩和で起業家に投資誘因を起こさせることになるのですが、日本は所得格差から家計所得のうち消費に回す消費性向は低いことで、国の経済政策が難しくしているようです。その上貯蓄から投資にいたる経過が、海外に流れていた結果国内企業の投資縮小で、経済が停滞していたことがわかるでしょう。
以上のように、海外投資による国内投資誘因の低さや消費性向の低さが、現在、日本経済はその全てに鎖で縛られているように身動きが出来ない状況なのです。そして、過去から経済成長率だけに取り憑かれていることが、政府の公共投資に頼り、国の負債総額が一千兆を超すまでに増え、尚も増え続けるような状況が続いているようです。金融政策や公共投資だけではどうにもならない状況だと理解できるでしょう。
速急に経済循環をよく考え将来の展望を開き、国内企業の雇用創出での拡大再生産による経済成長で財政再建を計ることです。言い変えれば海外投資規制で、雇用形態の改善投資誘因である資本利潤率や家計所得を最善に考え、国内企業の活性化をはかる時がきたようです。価格競争や金融緩和策、公共投資だけでは経済再生は不可能だと考えるべきです。
円安による実体経済の影響
金融で利益を上げようとする風潮は、物価高での経済の影響を考慮していないことが上図でわかるでしょう。すなわち金融で利益をあげようとするあまり消費性向を低下させ、物価高を消費が補えなかったことでデフレ不況になったのです。それは、物(物価)、人(賃金)、金(金融)が調和を保っていなかったのです。
為替はその時、その時がベースになりますので、このままレートが安定すれば物価はそのままになり、為替差益、差損は発生しません。そのように為替が安定すれば、もう金融利益は期待できないでしょう。現在利益があがっているという一部の大企業は、この円安差益や株高による評価利益が主だと考えられます(勿論輸出利益もあるでしょう)、また多くの非正規社員や派遣社員を増加させたのは、価格競争や金融利益のための犠牲になっていたのではと思わせられます。
現在政府や大企業の一部は賃上げをしたようですが、全て消費に回されるかです、また個人の株式投資は益も有れば必ず損もあるのです。低賃金の底上げをしない限り消費は増えないでしょう。景気の気だけでは高額所得者の株式投資などの貯蓄は増えても、消費は増えないということで、日本は競争、競争できた結果、この所得をおろそかにしてきたことが、経済の混迷を来してきたようです。
また、80円から120円まで円安になり(2015年5月現在)、外貨を抱えた国や一部の大企業は大きな評価益となり、また株価上昇での評価益が増えていますが、海外生産輸入物価も50%上昇したことになり、この円安での物価高は、低賃金層(非社員制度)の底上げをする政策を真剣に取り組まないと、消費につながらなく実体経済を停滞したままで、財政赤字で負債は増え続けるでしょう。なぜなら為替レートがこのまま安定し、株価が高止まると、金融利益は期待できなく、それより円高要素や株価も下落する懸念が充分にあるからです。
国民が耐え忍んでいても、政財界、エコノミスト、マスメディアの変化、力、努力がないと、経済の再生はないでしょう。それには国際的な協調協力が必要なはずです。なぜなら為替は自国が利益なら他国は損失なので、物価のことを考えると、円安誘導は日本にとっても他国にとっても不利益なはずです。そして金融利益をあげようとする風潮で0金利に近くなっている今の日本では、為替の安定は無理でしょう。なぜならこのまま円安が続いて行くとしたら、それに対して今の日本では金利をあげて円安を食い止める調整ができにくいからです。また日本が円安を求めているので空売り先物買いで円安になっていることもあるでしょう。よって全て市場に任せるのではなく外国との協力が必要なはずです。海外生産基地問題も然りです。
円高による実体経済の影響
円高で輸入物価が安くなったとき、円安還元セールなどを傍観していた、いや奨励していたような政治やエコノミストやマスメディアは何だったのかが、今になって思うはずです。日本人はとかく競争という言葉が好きなようですが、それは聖書を知らないからでしょう。
現在一部の企業の賃上げが実施されましたが、全て消費に回されるかが疑問で、報道では今では非社員が40%を超したと言われます。消費が増えないのは物価高と非社員の増加なのです。
円安が80円から120円までになり、この50%近くの輸入物価高を押さえるのは至難のわざでしょう、海外に進出した企業が価格維持の為に現地でリストラや、国内でもリストラ(シャープ等)を行うことがあります。それより海外でのリストラは国どうしの軋轢がうまれて、紛争の種になることが懸念されることが充分にあるのです。
以上為替の安定は物価の安定で、また物価の安定は為替の安定で、為替の動きは実体経済にとって最も重要なことで、且つ価格競争は日本経済を崩壊させることが分かる筈です。それには国の働きかけや調整規制が必要でしょう。
後進国の安い賃金による海外生産基地での生産による価格競争は、日本にとっても国際的にもデフレを誘発するのです。前述の自由放任と、ここでも価格競争(コスト削減競争)は負の証だということが証明されるはずです。