201612

負債大国日本

「負債は必ず返済が伴うもので、それは国の場合は税収等歳入、個人の場合は収入、企業金融業の場合は税引純利益(但し評価損益、償却費は除く)から返済されるもの」

負債が増えても平気なのだという政治家がいるようです。それは貸し手が有れば借り手が有るのでイコールだと言う。それはその通りです。「個人の預金(資産)は銀行の預り金(負債)銀行の国債購入(銀行の資産)は国の負債という事」そして簿記を知らないと言います。それこそ簿記を知らないのです。

簿記には貸借対照表と損益計算書、利益剰余金計算書(内部留保)があります。その貸借対照表が資産(借方)と負債及び資本(貸方)からなり、損益計算書が損失(借方)と収益(貸方)からなっています。そして、損益計算書の収益と損失の増減が資産や負債の増減を決定します。従って負債が増加するということは損益計算書の収益より損失が大になっているからです。その他に資産の売却や購入のときにも負債が発生します。資産の売却損益は損益計算書の利益と損失とになり、損失が大きいと負債が発生することになります。(資金計画の中でその資産の価値が無くなると、その分借入れに頼るように成るからです)資産の購入は貸借対照表の(借方)に記載され、その資金は自己資金で賄うか、他人資本(負債)で賄うかであって、自己資金は過去の儲けで蓄えたもの(内部留保)で購入するものです。それこそ利潤が上がっていなければ自己資金では買えません。また、蓄えた(利益剰余金計算書の内部留保)以上の物を購入するときや、すでに他の資産を購入してあって現預金が少ないとき、他の資産の売却を充てに出来ない場合は他人資本(負債)に頼ることになるのです。(利益剰余金計算書である内部留保は現預金やその他の資産として残っているもので、企業の力となっているのです)この時の資産購入は資産と負債が同額なので、この時負債が資産になると言えるのです。損益には関係ありませんが、投資(土地)以外の固定資産は減価償却として目減りします。また、貸したお金が戻らなくなったとき(貸倒れ)は資産が減り損失が増えます。その結果内部保留が無いときは資金繰りの中で借入れに頼る結果負債が増えることになります。その他販売不振で在庫が増えた時も資金負担になり負債が増加します。

以上企業会計からみた資産負債と損失収益から負債が増える過程を見てきましたが、日本の負債が増え続けることは、主に企業の利潤が上がっていない表れであり、収益(税収等歳入)<損失(国家予算等歳出)が大となっている表れなのです。それは税収不足で予算が足りず補正予算(国債発行)を必要となる事が物語っています。それに貧困家庭が増え続けていることです。この貧困家庭増加は経済政策の不備により税収が上がらなく、また、経済政策を公共投資や金融政策だけに頼り社会保障まで予算が行き届かないからだと考えられるのです。現在はまだ負債より資産が上回っているから破綻はないと言います。しかし、資産より負債が上回った場合デフォルト(不渡り)が起こりえます。それは、負債は返済しなければならず税収など歳入から返済しなければならないのです。その時に銀行券を増発すれば良いといいます。そして、負債が増えていても返さなくてもいいから破綻は無いと言います。しかし、簿記上発行した銀行券(現金)という資産の相手勘定科目は何なのかです。これこそ銀行券発行負債勘定という負債に計上されているはずです(間接的に国債の発行という負債)で収益では無いはずです。収益だとすれば日本銀行と国の粉飾決算となります。そのまま対策をこうじないと、消費低迷での企業破綻と税収不足でいずれデフォルト(不渡り)が発生し破綻し恐慌となるでしょう。そうならないように景気を良くしようと急激なインフレに成った場合、このまま負債が増え続けていると金融引締めで、金利を上昇した場合どうなるかです。負債の金利負担がともなうからです。

以上財務省も懸念していた負債が増え続ける(下記図参照)危険を述べてきましたが、日銀の大量の通貨放出でハイパーインフレは起こり得ないことは納得します。なぜなら貸し手は無条件に借り手にお金をかしません、収入、利潤の無い人や企業などにはお金が行き届きませんので、物が有っても買うことが出来ません、その前に負債があると破産や自殺に追い込まれるのです。これがバブル以後の企業倒産の実体で、銀行が貸したお金が焦げ付き損失をこうむり、負債を抱え経営難から証券会社や銀行の破綻となり、またビッグバーンでの自由競争(価格競争)の名のもとに海外基地進出で、ますます日本は衰退してきていたのです。(今までは倒産では無く公的資本注入、会社更生法、リストラ等で金融企業を救済してきた日本経済が崩壊状態といっているのは以上の通りです。
 企業は返済の為に利潤を上げようとリストラをする、それによって消費低迷に成り益々利潤が上がらなくなるという負のスパイラルが起こります。また海外基地投資で利潤は配当だけなので負債返済は限られ、その上デフレでは利潤を上げられないので企業の負債も減らず、やがて再び倒産が増えて行くことに成ります(現在もシャープ始め東芝、三菱自動車など大手企業の衰退が目についている)。ようするに、下記の図を見ても国内総生産より負債の増加が高いことで、国内企業業績である利潤をあげられるよう政治が努力をすべきで、そうすれば経済成長をとげ税収は増え財政出動を押さえられ、負債率は逓減していきます。それこそ海外生産から国内生産を復活させるべきなのです。それは決して保護政策やナショナリズムではないはずです。

以上のように、今は安定している状態だという人がいることは、日本の現状認識が甘いと思うしかないのです。景気対策に公共投資をしても再生産に続かなく一時的な経済政策なのです。(オリンピックまで、人不足が続くはず)したがって統計数字が若干良くなったからと言っても、この負債が増え続けている危険性を感じないと駄目だという事で、倒産の救済が何時まで続けられるのかです。

負債が有るけど資産も有るから問題無いという評論家がいます。では、その資産は日本経済にとって有効に活用されているのか?また、その資産は直ぐ売却や回収できて財政負担を解消できるのか?そして世界的に円が溢れているのは何故か?円が乱高下するのは何故か?確かにお金が回れば倒産は有りません、それが永遠に続けられるのか?金>物が著しくなるとハイパーインフレの危険があるのです。要するに資産負債の静態で経済を分析するのでは無く、動態的に企業も国も損益、収支で成り立っているはずです。経常的な成長政策は絶対に必要で、尚且つ負債削減に努めるべきです。それらの事は時価主義に変り実体経済が曖昧になった結果だと考えます。
 
 以上のことは批判ではありません、実務上から見た現在の日本経済の問題点の大きな一つで、経済の基本に戻らないと恐慌は起こりえると言う事なのです。全ての国民は経済の復活を望んでいるはずです。

財政破綻否定論とプライマリーバランスをご覧ください   以上

債務残高の国際比較(対GDP比)

(%)

暦年 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
日本 144.4 153.5 158.3 166.3 169.6 166.8 162.4 171.1
米国 50.7 57.4 58.8 66.7 66.9 64.4 64.9 78.6
英国 51.3 53.4 52.2 54.7 56.1 55.3 55.6 68.3
ドイツ 58.8 61.3 64.7 68.0 70.4 68.3 64.2 68.2
フランス 70.9 74.6 78.5 80.2 81.8 76.8 75.6 81.6
イタリア 118.1 117.0 114.2 116.2 118.9 116.2 111.7 114.5
カナダ 85.7 84.8 80.3 76.5 75.8 74.9 70.4 74.7
ギリシャ 114.0 113.7 108.8 110.3 112.0 116.9 114.6 118.6
暦年 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
日本 188.8 193.2 209.4 215.4 220.3 226.1 229.2 232.4
米国 93.5 102.7 108.3 111.4 111.4 111.6 110.6 111.4
英国 81.7 93.0 106.9 111.2 106.4 116.8 116.4 115.5
ドイツ 75.6 84.2 83.6 86.3 81.4 82.1 78.5 75.0
フランス 93.2 96.9 100.8 110.5 110.1 119.1 120.1 121.3
イタリア 127.3 126.0 119.4 138.1 145.0 158.7 160.7 159.9
カナダ 87.4 89.5 93.1 95.9 92.3 94.6 94.8 94.8
ギリシャ 135.2 128.6 111.2 166.2 182.0 181.3 190.0 200.0

(出典)OECD "Economic Outlook 98"(2015年11月)

※ 数値は一般政府ベース。

債務残高の国際比較(対GDP比)