2015年12月
                
日中国交正常化

1971年アメリカのキッシンジャーと周恩来が意見交換をした様子が、ネットに載っている映像の全てを文章化しました。その翌年に日中国交正常化に至ったことが、周恩来はアメリカの考え方を知ったことで成立した事が解るようです。

日本がいかに中国や歴史に関心を持っていないかが解り、また、経済が政治(軍備、戦争)を左右することの恐ろしさを感じました。そして、現在は二人の思惑とは大分違ってきていますが、指摘している「日本の経済発展が後々重大な事態を引き起こすというのは私も貴方と同じ見立てです」と言っている事とが当たっているようです。やはり日本はキッシンジャーの指摘の通り普遍的な視野の欠如だということでしょう。以下読んでみて下さい。日中国交正常化が見えると思います。

 

「周恩来・キッシンジャー機密会談録」

時は米ソ冷戦時代の1971年ソ連と対立した中国に対して極秘裏に接近を試みるアメリカキッシンジャー大統領補佐官は北京にて周恩来と会談した。これは会談で日本が話題の所を部分的に抜き出したものである。

 

周恩来:では日本についての話をしましょう、今の日本をどう見ていますか

キッシンジャー:それは日本へ留学経験のある貴方がどう見ているか述べるのが先では?

周恩来:まず日本の経済規模の大きさを考えればこれを強引に潰そうと言うのは無理です

    そんな事をしたら影響を受ける他の国からも大きな反発があるでしょう、これは日本をここまで復興させたアメリカにも責任がありますよ、日本は、いま世界で途上国の経済植民地化を進めています。あの大国も、日本を招き入れて経済発展しようと考えていると聞きますし。

キッシンジャー:「あの大国」とは貴国の北側にある国の事ですか?

周恩来:そうそう、その国(ソ連)の事です。私たちとしては、あの敗戦を教訓に日本が平和で中立な国になる事を望んでいます。ですが、このまま日本が経済拡張を続けたらいつか問題を起こすでしょうね、その時は、「自衛だ」と称して経済だけでなく、軍事も拡張もおこなうでしょう、貴方は、その分野の専門家ですよねえ貴方の同僚の駐日大使ライシャワーさんもそう見ているはずですけど?

キッシンジャー:あの人、今の私たちの政策に対してとても批判的なのです

周恩来:あの方と貴方とは本当に考え方が違うそうですね

キッシンジャー:あの人は、私の所為で日米の関係が悪くなるというんですよ

周恩来:まあ、その辺は「友好」という言葉をどう解釈するかの違いでしょうね、第三次世界大戦を起こそうと考えているのか?極東の緊張緩和を考えているのか?日本は、ずっと中国を侵略してきましたけれど、私たちは、報復をしようとは考えていません。国家の主権と領土をお互いに尊重し平和が保たれればそれで良いと思っています。まあ今の所、日本人の多くも私たちと同じ考えでいることでしょう。ですが、日本人は扇動されると簡単に舞い上がってしまう。戦争の償いをしていないどころか、他国の戦争で物凄く儲けている日本がいったん軍事拡張の道を再び歩み出せばどこまで拡張するのか見当も付きません。アメリカは日本をどうさせるつもりなのですか?

キッシンジャー:そもそも貴方が言う「平和と友好」とはどういう事を意味しているのでしょうか?

周恩来:そうですね・・・それはまあ、台湾政府の事を認めずに中華人民共和国を中国唯一の政府だと認めるという事ですね、ハッキリ言って私たちが求めて入る事は、とても明快です。それに引き換え日本の総理や大臣外務大臣というのな何なんですかね・・・

キッシンジャー:あの人たちは、密使としての役割を自ら否定しているようなものですかねえ

周恩来:貴方も同じ経験をした事があるのですか?

キッシンジャー:私も日本の密使とは何度も会った事があります。ですが、誰が何のために話をしているのかもよく解らないんですよね・・・

周恩来:貴方も、私と同じ経験をしているんですね・・・

キッシンジャー:しかも、日本人には共通する習性があるんですよ、それは、帰国したら日本のマスコミにペラペラと話をしてしまうと言う事です。貴方にもそういう経験はありますよねえ?

周恩来:もちろんです20年以上、そういう経験をし続けています、ですがあの方たちは一向に止めようとしないんですよ、そろそろ貴方の日本に関する見解を聴きたいですね

キッシンジャー:では、私たちがアメリカの日本観を率直に披露しましょう、まあ、アメリカ政府にはこれと言った統一見解はありませんが、ここ何年か、ホワイトハウスで支配的な見解を伝える事としましょう、貴方たち中国を比較対象として日本を観察している事を、まず許して欲しいのですが、中国が、歴史的で普遍的な視野を持っているのに対して、日本はとても部族的な視野しか持ってませんね、

周恩来:そうですね、日本はととても視野が狭くて、変わり者です。まあ、島国人間の特徴でしょうね、イギリスと一緒です。

キッシンジャー:いやいや、日本はイギリスともちがいますよ、日本は自分たちの事を「世界でも変わった特別な存在」と思っており、自分たちの基本は残しつつ、何でも取り込んで自分たちに合わせて吸収しようとします。だから日本は、急激な変化にも簡単に対応できるんですよ、日本は、たった3年で封建主義から帝国主義に変わりましたし、この前は、たった3か月で帝国主義から民主主義に変わりました。

周恩来:そして今は、もう一回帝国主義に変わろうとしている・・・

キッシンジャー:まあ、本当にそうなるのかは日本が世界情勢をどうみているか次第です。

周恩来:ところで貴方は天皇に会った事がありますか?

キッシンジャー:前にアラスカで会いましたよ

周恩来:何を言っているのかよく解らない事はなかったですか?

キッシンジャー:そうですね・・・意味の解らない事を言っている訳ではないのですが、何を伝えたくて話をしているのかはよく解りませんでしたねえ、これは別にあなた方たちに情報を漏らしたくないから言葉を濁している訳ではないのですよ、

周恩来:それは、よく解っています。

キッシンジャー:日本人は自分たちが、文化的にみんな同じなので、自分たちと違う文化に対して、とても鈍感なのです。他国や多民族に対する理解の欠落が日本との交渉を、とても困難なものにさせている、私たちも、貴方たちもその被害者ですよ、本当に、日本と分かりあえて協力関係を築けると本気で考えている人たちは無知としか言いようがない・・・・日本の経済発展が後々重大な事態を引き起こすというのは私も貴方と同じ見立てです。私は日本にたいして愚かな幻想を全く抱いていません、そうした幻想を抱いている人たちは後で後悔するだろうと思っています。ですけど、いま貴国が「米国はいつ日本を裏切るか解らないと、煽っているのは、正直に私は、中国にとっても得策では無いと考えています。そんな事をしたら「米国が裏切ったから仕方が無いと、言わせて日本がナショナリズムを呼び起こすのが落ちですので・・・これは日本を挟む米国と中国にとっても良いことではありません。貴方は先程「日本は中立化して欲しい」と言いましたが米国・ソ連に次ぐ世界3位の工業大国が中立化したらどういう事になるのと、考えているのですか「中立」と言えば、ベルギーのように緩衝地帯として、周辺の国が中立化させるのか、スイスやスエーデンのように重武装化して自主的に中立化するのかの、どちらかです。まあ、日本が中立化するのはどう考えても、後者の方でしょうねえ、そんな事になれば、米中両国だけでなくアジア・太平洋全体の危機となります、日米安保というのは、日本を守る為に、ある訳ではありません、現実的には、安保条約というのは日本を押さえ付けておく為に機能しています。その安保体制を壊して日本を解き放つというのは中国にとってもハッキリ言って愚策です。ですから、アメリカと中国とで日本を両方から押さえ付けておく必要があるんですよ「敗戦と共に、日本は生まれ変わった」という幻想に取り付かれて。日本がずっと、アメリカの属国でいる」と考えている人たちは、本当に愚かです。まあ、この辺りで米国の日本政策についての要点をちょっと纏めておくとしましょう。

まず第一に、日本の核武装についてアメリカは、その保有に反対だという事、続いて第二に、日本の通常兵器について自衛の範囲に抑え込ませるという事、以上がアメリカの基本原則です。

 

周恩来:では、貴国が日本の核武装を望まないと言うのであれば、日本へ「核の傘」を提供しないという認識で良いですか?日本は、核の傘を利用して他の国に脅威を与えていますので

キッシンジャー:日本が、核の傘で他国に脅威を与えるとは、どういう意味でしょう?

周恩来:まず日本は、貴国の核兵器を自分たちのモノだと思っています。その上で日本は軍事を貴国に任せて経済拡張に専念し、経済拡張を実れば、その後で軍事拡張を図る気でいるんです。

キッシンジャー:まあ、仮定の事は、ハッキリとは言えませんが、日本が自分たちから軍事衝突を起こしてもアメリカは核の傘を適用しませんよ、まず核の傘は、日本列島への核攻撃を抑止するのが一番の目的ですし、そもそも核兵器は、日本の為にではなく、米国が米国の為に使う為、持っているのです。他人の為に自らを犠牲にするよな馬鹿がどの世界に居ると言うのでしょうか?ですが、日本自身が核兵器を作ろうと思えばすぐにもでも作れる能力は持っているでしょうね。

周恩来:確かに、そうでしょうね

キッシンジャー:もしも米国が、核の傘の提供を辞めれば日本は原発を持っていますから、簡単に核兵器を作ってしますと思っています。それを望まないのであれば、日本の原発使用に反対するしかないのです。

周恩来:実際の所、アメリカは軍事力で日本を現実的に押さえ込む実力を持っていますか?

キッシンジャー:私自身には、よく解らないので、何とも言えませんねえ、ですが、安保条約を利用して、日本の軍事力を押さえ込んだ方が良いとは考えています。もしも、安保の首枷を外したら日本に冒険的な暴走をさせるだけでしょうしアメリカが、第二次大戦で日本を潰したのは日本に力を付けて、冒険させる為ではありません。ですが、仮にそうした事態となれば、歴史的にみても、「米中同盟」の復活でしょうね、今の所、アメリカは日本の軍事拡張を押さえ込む事に全力を尽くしていますけど、それに失敗したら、アメリカと中国とで日本の暴走を叩き潰すべきだと思います。 

以上、本当に一部分のみですが、米中会談の超訳再現を終わります。日本にかんする話もまだまだありますが、当時の様々な世界情勢についても両名の議論が交されていますので、興味ある方は、岩波書店出版の「周恩来・キッシンジャー機密会談録」で続きの方を読んで下さい。

以上で終わりますが、日本が台湾と国交断絶したのは、この会談の日中国交正常化が成立した際で、この会談のなかに周恩来の思いが述べられていた事で解りました。そして台湾が中国の一部だという事は、台湾との国交断絶したのは、中国との国交正常化時に了承したと、うかがわれる事です。

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