2014年2月
                        経済の循環について

 ケインズの有効需要は社会の成員が国民所得のうちから、企業の作り出した生産物への購入にふりむける部分である、それ故、総需要を生み出すもとは国民所得であり、さらに国民所得が生まれてくるもとは何かといえば、企業の生産活動である、その関係をわかりやすく図解すれば下図のような具合になる。



 経済組織全体を通じての財貨の流通経路を明らかにするために経済の構成単位を家計と企業とに大別する。資本家としての家計は資本用役を、労働者としての家計は労働を、地主としての家計は土地用役を、それぞれ企業に提供して、その報酬として、利子、労賃、地代を獲得する。これが国民の総所得となる、家計は、その所得を以て企業のつくる生産物の購入消費にあてる、それ故、企業より家計にむかって流出した貨幣は、ここに再び企業に還流するわけである。
 さらにもう一つ、企業内部の間の貨幣の流通がある、企業が、その消耗した生産設備の補填部分や原材料を、他の企業から購入するさいの貨幣の流れである、家計が社会全体の家計であるごとく、企業もまた消費財産業から生産財産業をふくめた全企業であるから、この貨幣の流れは企業そのものの内部で自己完了をとげる、それ故、企業が生産活動を行うにさいして放出した貨幣は、二つの形で、またもとへ還流するわけである、二つの形とは、消費財にたいする消費需要と、生産財にたいする投資需要とである(補填投資)、この家計と企業の二つをあわせて有効需要という。
 ところが、家計は、その所得の全部を消費にふりむけるということはしない、その一部を貯蓄するであろう、すると貯蓄の分だけ、有効需要は減少することになる、また企業は、行うべく補填投資を行わないこともあろうし、設備の拡張などのために新しい生産財にたいする新投資を行うかも知れない、そこでこの貯蓄の大いさと、投資の大いさの関係によって、有効需要は増したり、減ったりする、有効需要が増大すれば、企業の生産物が売れて利潤が増大するだろうし、有効需要が減少すれば不況に陥り企業は損失を被るであろう。
 ここにおいて、経済変動の鍵は有効需要の大いさにあること、そしてその有効需要の大いさを決定するのは、所得の消費と貯蓄への分配関係(消費性向)および新投資活動にあることが了解されるであろう。(以上世界十五大経済学、マルクスとケインズ、近代経済学研究会編、富士書店発行167〜168ページより)
 しかし、ここ十数年のあいだ下図のように新投資としての企業活動は海外に流れていました。
  
 それが国内の需要の減退となって不況に陥っていたことがわかるでしょう。次に上図の原図から所得=消費+貯蓄で、また所得=消費+投資ともなります。その二つのことから貯蓄=投資という関係が導き出されます。しかし貯蓄と投資とは必ずしも一致せず、その相互の不一致によって景気の変動をもたらします(この景気変動を政府の財政介入で調整される)。この貯蓄と投資が均衡することが所得水準を決定するという、これがケインズの貯蓄投資の所得決定説です。
 以上のことから考えて投資が海外市場に流れていたことが、国内企業の活性化を削がれ、所得を減らして家計所得に影響し、消費不況から脱し得なかったことが証明されるでしょう。そして、その結果、政府の財政投資による国債などの負債増となり、いまでは負債総額が一千兆を超えたようです。少子高齢化だからではすまされません。また図には有りませんが輸出依存が価格競争になり、凄まじい倒産があって日本経済は行く道を見失っている状況が続いています価格競争崩壊のメカニズムを参照下さい)。
 現在経済の循環と言うようになりましたが、この需要の増大をはかる基はまずは国民所得の増大です、言い換えれば家計所得の増大でしょう。それには以上のように海外投資を規制する事が最も重要なことのようです。
 金融経済だけでは経済を再生するのが無理なのは、為替レートを参照すればわかるはずです。特に注目するてんは、1ドル80円から100円近くになり、海外投資した外貨は円安により為替差益を多額にだしたことが、輸入物価の値上がりによる輸入増での貿易赤字を補った結果となっていますが、再び円高になったときは為替差損が発生することになるでしょう。
 経済の循環をよくするのは賃上が重要な要素の一つですが、
価格競争(デフレ)崩壊のメカニズム参照してわかりますが、価格の内の賃金を上げても価格を上げられないと無理なので、価格上昇を消化できる政策が同時に行う必要があるでしょう。特にこれから消費増税による必然的な価格上昇があるのです。そのように全てを見直さないと消費需要は生まれないでしょう。そして、経済の重要課題の物価の安定は、為替の安定と限りなく需要と供給がイコールであるか、適度に需要が供給を上回ることで、デフレや行き過ぎたインフレは決して好ましい状況ではないのです。
 デフレは供給>需要であって物価が下がっている状態ではありません。ものが売れなく結果として物価が下がっていることです。また物価があがることはインフレだけではなく、現在のような円安による物価上昇があるのです。インフレとは供給<需要で、過去にこの行き過ぎたインフレが有ったとき、経済政策をどうするかだったのですが、このことを無策できた結果現在があることを、ケインズの貯蓄投資の所得決定説を発展させたハンセンの
デフレギャップの中にインフレギャップがありますのでご覧下さい。
 最後に、価格を構成する諸項目の原材料、賃金、地代利子等、どの項目も犠牲にならず利潤を追求し、拡大再生産をはかって行けば、財政再建は可能になるはずです。それは国富論でいう物(物価)、人(賃金等)、金(金融)が適切に調和を保って利潤を得ていくという、価格競争でなく全てが調和を保つように政治が主導する必要があるのでしょう。勿論国際的にも強調協力関係が必要なはずです。              
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